ハイブリッド・メディア環境におけるオンラインニュースとネット世論の関連性

〜北朝鮮政治事件報道を事例にしたYahoo!ニュースコメントとTwitterデータの分析

本ラボを修了した、早稲田大学大学院 政治学研究科ジャーナリズムコース 修士課程修了生の論文概要書です。

by R.S. (2018年3月修了)

ハイブリッド・メディア環境におけるネット世論とメディア関係はますます複雑になっている。近年ではメディア技術の発展により、メディア環境における一般公衆関与も拡大しつつある(Mattaoni&Ceccobeli,2018;Chandwick,2011a;2011b)。このなかで特に一般公衆は意見の表明、ネット空間の討論へ参加可能なプラットフォームを提供する情報媒体はネット世論の形成周期を加速し、オンライン上でのニュースの産出、流通、世論形成プロセスの構造が根底から変革している(木村,2018b,p.248)。

こうした背景をもとにオンラインニュースとネット世論の形成との間ではどのような関連性を示しているか。本稿はこの問題意識を提起した。

その問いに取り組むために、本稿は日本におけるネット世論形成のメディア生態系を踏まえて、Yahoo!ニュースとYahoo!コメント、Twitterをそれぞれオンラインニュースとネット世論の分析対象とし、南北首脳会談から米朝会談までの北朝鮮にかかわるYahoo!ニュース報道内容とYahoo!コメント、Twitterの内容のデータを扱った。その上、計量テキスト分析手法を用いて、議題設定効果の知恵を援用しながらハイブリッド・メディア環境中のオンラインニュースとネット世論の関連性について追究を試みた。

本研究は、主に以下の3点を明らかにした。

第1に、Yahoo!ニュースである争点の顕出性が増大するほど、Yahoo!コメント、Twitterでもこの争点をめぐる討論が拡大する傾向が見られた。仮説検証の結果は、多様な情報が織り成すかつ複雑なハイブリッド・メディア環境においても、オンラインニュースの議題設定力はネット世論に影響を及ぼすことを確認した。しかしながら、オンラインニュースで強調されるある争点をめぐって、ネット世論空間での討論内容とオンラインニュースの報道内容は関連性がみられなかった。逆に、民衆の関心度が高い争点がオンラインニュースでよく取り上げられると、オンラインニュースの発信内容とネット世論空間での討論内容が類似するということが明らかになった。

第2に、Yahoo!ニュースと密接な関係にあるYahoo!コメントよりも、Yahoo!ニュースとあまり密接な関係性のないTwitter言論の方が、議論されている争点が似ていることがわかった。この検証結果は、ネット世論の形成に対してネット世論の構造は重要な影響要因であり、異なるネット世論の構造によりオンラインニュースの議題設定力は細微な差があるという結論が導かれた。

第3に、オンラインニュースと比べると、ネット世論内部の争点顕出性順位相関係数が高いことがわかって、ネット世論内部でもお互い影響して情報が流通しているという観点が提示された。

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