女性誌の広告における脱毛を推奨する言説の時代変遷〜エチケットから自分磨き〜

早稲田大学政治経済学部ゼミ生の卒業論文概要書です。

Author: T.M. (2019年3月卒業)

本研究の目的は、日本の脱毛広告が、固定的な「美しさ」を人々に植え付けるメカニズムを捉えることである。他者からの評価を自らの評価として内面化していきながら、脱毛行為はどのように文化として構築されて適用されてきたのだろうか。雑誌の脱毛広告における言説の分析を通して「女性誌の広告における脱毛を推奨する言説が時代を超えてどのように変化してきたのか」という問いに答えていく。

先行研究では、脱毛に対する考えを問うアンケートやインタビューを通して、人々の感じ方や捉え方を深掘りしているものが多く見受けられた。一方で、「脱毛」が文化として構築され、生活に適用されていく流れを視野に入れた実証研究は少なかった。そこで本研究では、雑誌の脱毛広告の言説の長期間の内容分析を通じて今までの「脱毛」の表現のされ方とその原因について、長期的な期間を対象として実証した。

本研究では、雑誌『an・an』が創刊された1973年から2018年までに出版された6月号の「脱毛」に関連する広告を収集して無作為抽出を行ってデータを抽出した。その抽出したデータについて、予め用意したカテゴリに該当するかどうかを判断していく内容分析を行いその変遷に注目した。
また、データを5年ごとの期間に分類してデンドログラムを作成して、広告が該当するカテゴリ数の推移の観察を行った。

作業仮説としては、以下の2つを設定した。
1)時代が下るにつれ、脱毛を推奨する言説のバリエーションが増える。
2)言説の内容が「他者からの評価」に対する罪悪感を訴えかける内容から「エチケットとしての脱毛」を提示する内容に変化する。

結果、言説のバリエーションの増加は一定程度見受けられたものの、その勢いは途中で収束していったため、時代を下るにつれてバリエーションが増加するという仮説を検証することはできなかった。しかしながら、該当するカテゴリが同じでも脱毛行為を「自分を更に魅力的にするもの」として説明する言説と「していないと恥をかくもの」として説明する言説の違いが時代をくだるにつれて明確になっていた。その点において、作業仮説2である言説の内容の変化は検証できたと考えられた。
今後の課題としては、サンプル数を増やすことが考えられる。例えば、雑誌媒体を増やすことやweb媒体を含むこともより有効な分析に繋がるだろう。

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