「ファーウェイ」に関する日中米 新聞紙報道の内容分析

本ラボを修了した、早稲田大学大学院 政治学研究科ジャーナリズムコース 修士課程修了生の論文概要書です。

Author: L.J. (2020年3月修了)

概要

 ファーウェイ(中国語表記:華為技術、英語表記:HUAWEI)は、1987年に中国深センに創立された多国籍企業である。世界に知られる中国会社であり、中国発ブランドの代表とみなされる。2017年8月14日にトランプ大統領が中国の貿易行為に対して調査を指示する大統領覚書に署名した。米中貿易交渉において、中国の次世代通信5Gの中核を担っている、「一帯一路」に関わるファーウェイに対する制限と交渉は貿易合意の主な争点となっている。
 日本は米中の主要貿易相手国であり、日米貿易戦争を経験していた。そのため、日本メディアはファーウェイを報道する姿勢が異なると考えられる。本稿で日中米三国の新聞紙報道はどのように「ファーウェイ」を語っているのか、その各自の特徴と三国新聞紙報道間の関連性を捉えていきたい。文化背景の異なる三国の新聞報道を比較して、汎用型フレームと争点特定フレームの応用という方法論の視点からの検討することを目指した。
 まず、ファーウェイの概要を説明した。ファーウェイとは何か、ファーウェイの関連事件をまとめた。今回の争点となっていた孟晚舟CFO拘束事件、カナダ人拘束事件、FedEx郵便物誤送事件、ファーウェイ製品排除の経緯、ファーウェイに関わる米中貿易戦争、『中国製造2025』、日米ハイテク戦争などの研究背景を述べた。
 次に、これまでの多国間新聞紙報道に関する先行研究、フレームとトーンの理論をまとめて、本研究の問題意識と視点を示した。日中米は「ファーウェイ」とその関連事件をどのように報道したのか、外国新聞報道をしている時に国益、文化背景の違いによって影響が生じるかどうかを問題意識として提起した。
 本研究では、2017年8月14日から2019年7月10までの米国の『NewYorkTimes』、日本の『朝日新聞』と『読売新聞』、中国の『ChinaDaily』の記事を対象として、「ファーウェイ」に関する記事を取り上げて内容分析することで、貿易戦争時期に日中米報道はいかなる「ファーウェイ」を語っているのか、関連報道の全体像、変遷、フレームとトーンの異同を明らかにして、その原因を推論した。
 結果として、主に以下の3点が明らかになった。1.報道量の推移については、『朝日新聞』、『読売新聞』、『NewYorkTimes』三紙の変動傾向は一致性が高く見え、『ChinaDaily』は独自の報道量推移があることが示した。2.フレームの使用について、四紙とも責任帰属フレームを一番多く使ったことが明らかにした。また、『朝日新聞』、『読売新聞』と『NewYorkTimes』は中国とファーウェイに対するポジティブなトーンが少ないことが明らかにした。『ChinaDaily』は中国とファーウェイに対するネガティブ的な報道がなく、米国に対する批判が多く見られる。3.四紙ともファーウェイと中国を利益の一体として見なして、中国とファーウェイに対するトーンに共振があると考えられる。フレームとトーンの関連性を検証した結果、両方の相関関係がないことが示された。
 考察に四紙の報道姿勢と特徴をまとめて、「新聞の客観性」の欠如を問題点として提示した。日中より、日米の方が共通点が多く見られる。その理由は国益であるほか、外国報道の「メディア・フレーム」にもつながると考えられる。四紙とも出来事の経過を報道することより、観点を表明する場合の方が多く、明らかな偏向性が見られる。
 最後に、時間スパンに関する不足点を述べ、情報源の分析などの今後の課題を提示した。付録ではコーディングルールと整理コードを提示した。

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