高校野球におけるファンのファン度合い

早稲田大学政治経済学部ゼミ生の卒業論文概要書です。

高校野球におけるファンのファン度合い
-Twitterから見るファンの検証-

Author: N.R. (2019年3月卒業)

研究目的

2018年に開催されたW杯で「にわかファン」と言われるファンが、Twitterや情報番組で取り上げられていた。「にわか」とは大辞林(第3版)では、「かりそめであるさま。臨時的。一時的。」と書いてある。[1]ここで多くの老若男女のファンがつく高校野球にはどんなファンなのかが気になった。そこで本研究では、Twitterを使用し、ファン階級を3つに分類し、高校野球におけるファンのファン度合いを検証した。結果、分類通りにはならないことがわかった。

研究の背景

スポーツファンとは、平井(1997:29)によると、「対象となる種目やレベル、チームや個人(選手)などに関係なく、スポーツに一定の関心をもち、その結果何らかの行動をとる人」と定義している。[2]中には周囲の流れに合わせ、流行の波に乗って雰囲気を楽しむ一時的なファンも存在する。対象に対する没頭、興味の程度、ファン期間の長さにより、「本物(real) 」であり「真の(authentic)」コアなファンと、嘘の(phony)にわかファン(bandwagon fan)の2つに分類する方法が提示されている(Borer,2009 訳は筆者による)。[3]

その中のにわかファンとコアファンの2種類に注目した。この研究から、どれだけ高校野球が観戦者や視聴者に影響を与えているかがわかるであろうと考える。仮説として、ユーザーのプロフィールに「高校野球」という記載があるファンは、抽出した7種の名詞類での「高校野球」関連語句数が、「野球」関連語句数よりも上回るということと、ファン度合いに従って3グループに分けたとき、定義通りに「高校野球」関連のツイート件数と関連語句が対応しているかどうか、を挙げた。

研究の方法と結果

本研究では量的内容分析と対応分析の2種類の分析方法を使用した。ファンがつく要因として、広沢(2006)の研究により「強さ」があげられた[4]ため、第100回全国高等学校野球選手権記念大会で決勝に進出した2校を対象とし、広沢(2006)のファン心理研究を元に、「イケメン」「かわいい」「可愛い」「カワイイ」「かっこいい」「カッコイイ」「ファン」「頑張れ」「好き」「大好き」の11単語を選出し、これらを含むツイートを抽出した。縦軸に対象語を含んだツイート数、横軸にユーザー名とした棒グラフを降順に並べパレート図を作成し、上位1 %(ツイート数(以下略):5~12回)を<コアファン(コア)>、24 %(2~4)を<ミドルファン(ミドル)>、他76 %(1以下)を<にわかファン(にわか)>と定義した。

次に、Twitterのプロフィール画面に「高校野球」関連語句があるユーザーを優先し、各グループから10名ずつユーザーを選出し、各ツイート3,000件をSpyderにより取得し、そのデータを元に大きく分けて4つのデータをまとめた。各ユーザーのプロフィール、2017年、2018年の夏の大会と2018年ドラフト時の高校野球関連ツイート数、ツイート内容から抽出した《名詞》《サ変名詞》《固有名詞》《組織名》《人名》《地名》《複合語》の全7種類の名詞の頻出語上位10語、そして頻出語を「高校野球」関連と「野球」関連に分類したときの数の差、である。また、各グループの対応分析も行った。その結果、コアは「高校野球」関連語句が多く含まれ、関心度が高いと見えたが、ミドルはコアよりも少なく、無関係な語も含まれていた。にわかに集まっている語句のほうがミドルよりも野球関連語句が多かった。

考察と結論

1つ目の、自身のプロフィールに「高校野球」と書いてあるファンは、名詞類での「高校野球」関連語句数が「野球」関連語句数よりも上回る、という仮説については、一概にそうとは言えないことがわかった。2つ目の、コア、ミドル、にわかの3グループに分けたとき、その定義した通りに「高校野球」関連のツイート件数と関連語句が対応しているかどうかという仮説は正しくなかったと検証された。

この研究により、高校野球への関心度合いが高いものと低いものの差があることがわかり、1年目に注目していても翌年から見なくなる人も多数いることがわかった。

しかしその要因が、興味がなくなったからなのか、ユーザーの忙しさなどの私生活的理由なのか、地元の高校だけに注目していたからなのか、がわからなかった。ここから、取得したツイートをクラスター別に分類してみることで、高校野球への関心度合いの上がり下がりの要因や、何に注目して高校野球に楽しみを見出し、ファンがついているのかがわかるのではないかと考えた。

【参考文献・脚注】

[1] 松村輝編(2006)『大辞林』第三版, 三省堂

[2] 平井肇, 永井良和, 沢田和明, 木佐貫久代, 谷口雅子, 菊幸一, . . . 小椋博. (1997). スポーツファンの社会学. (杉本厚夫, 編) 世界思想社.




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