本ラボを修了した、早稲田大学大学院 政治学研究科ジャーナリズムコース 修士課程修了生の論文概要書です。
Author: C.M. (2020年3月修了)
概要
近年、ソーシャルQ&Aサイトは参加者同士の知識や経験の貢献と共有を重視したアーキテクチャが好評を博したことにより、著しい発展を遂げており、インターネットでの情報共有や知識普及を促進している。一方、ソーシャルメディアにおけるユーザー作成コンテンツ(UserGeneratedContents,UGC)を用いて、論争的な萌芽的技術に関する世論を洞察する研究も多く見られている。
本研究は、主にウェブスクレーピング、トピックモデリング、回帰分析の手法を用いて、英語圏、中国語圏の代表的なソーシャルQ&Aサイト—『Quora』と『知乎』におけるヒトゲノム編集を代表とする萌芽的技術に関する世論の話題と、異なるソーシャルQ&Aサイトにおける世論形成に寄与する因子を探り出し、比較をしたことにより、英語圏、中国語圏における萌芽的技術に持たれている関心の同異と、『Quora』と『知乎』における世論形成に寄与する因子の同異を検討した。
本研究で考察できたことを主に以下3つを挙げられる。
第一に、『Quora』と『知乎』において、ヒトゲノム編集に関する議論の量的変化は、主に「ゲノム編集ベビー事件」から影響を受けたからである。
第二に、『Quora』と『知乎』におけるヒトゲノム編集に関する議論から、それぞれ10個の関連トピックを抽出し、比較を行った。これらのトピックは、主に「メカニズム」、「ビジネスマーケット」、「ゲノム編集ベビー事件」、「用途」、「影響」という5つのカテゴリに集中していた。その中で、「ヒトゲノム編集のメカニズム」というトピックに関する議論はほかのトピックより、『Quora』と『知乎』ともに多数を占めていた。また、「ゲノム編集ベビー事件」と「ヒトゲノム編集のビジネス応用やマーケット」というトピックは『知乎』のほうでより重視されていた。一方、ヒトゲノム編集の用途と影響に関しては、『Quora』のほうでより多くのトピックで、多面的に議論されていた。
第三に、『Quora』と『知乎』における世論形成に寄与する因子をそれぞれ探り出し、比較を行った。結論として、『Quora』では、「回答のシェア数」、「回答のコメント数」、「認証済みアカウント」、「回答テキストの長さ」、「回答の存在日数」という因子が回答が多く賛同されることにポジティブな影響を与えており、「質問のフォロワー数」がネガティブな影響を与えていた。『知乎』では、回答に関しては、「回答のコメント数」、「回答テキストの長さ」、「回答の画像数」がポジティブな影響を与えていた一方、コラムに関しては、「コラムのコメント数」、「コラムの画像数」、「認証済みアカウント」がポジティブな影響を与えていた。